「早く避難するように言ってきた若い教師?」
「そう、そいつ!」
深青の確信を持たない声に大也は同調する。
わかってもらってよかったという安堵感が大也に現れていた。
「その教師なら確か、学年は3年を担当してたよね。一条さんとの接点ってないように思うけど………」
優奈は自然な疑問を述べる。
「だから………だからこそあやしいと思わない? 接点がないのなら、どうして一緒にいたのか。関係がないのならそれでいい。………それに、彼女だけがあやしいのではないのかもしれないし」
「確かに………。なんにしても正木のおかげで1つ足がかりは掴んだということだね」
優奈はお手柄というように大也の背中をポンポンとたたく。
楽観的な優奈とは裏腹に深青は真実を告げる。
「それも、何もないかもしれないけどね」
優奈と優奈に褒められて少しいい気分だった大也も深青の言葉に固まった。
言われてみるとその通りなのだが、もう解決した気分に少しなっていた2人は黙りこむ。
そうなのだ。
まだ何も終わってもいないし、何もわかってはいないのだ。
2人はもやもやとしたこのわからないことが続くのかと思うとため息をつかずにはいられなかった。
それもとても深いため息を………。