誰もいないと思っていたはずの大也は校舎から………それもすぐ近くから聞こえてくる声に耳を傾ける。


(俺だけじゃなかったのか………。結構、遅いのにまだ残ってるなんて………。それも、女…………)


そう思いながら1つのことに気づき大也はフッと笑う。


(別に生徒ってわけじゃないよな。もしかしたら、教師かもしれないし)


勝手な自分のこじつけを否定するように1つの結論に達し、大也は今度こそ帰ろうと1歩を踏み出した。




その時、微かに聞こえた声だけではなく廊下を歩く足音が聞こえ、反射的に大也は振り返った。








見えたのはごくありふれた光景。





緩やかな波打った柔らかそうな髪をやんわりとくくり残りの髪をたらしている少女。


その髪型がとても彼女にはあっていた。


彼女はうきうきと幸せそうな表情で相手の顔を見ている。




一方、相手は私服を着ていることと外見からも生徒ではありえない。


まだ20代と確信が持てる若若しさ。


そして、端正な顔立ち。


誰かは大也にはわからないが教師であるのだろうということは感じていた。