その日、大也は部活見学を終え、1人で廊下を歩いていた。


「はぁ。なんか、もう1つだったな。運動部も」


1人愚痴るように呟きながら手に持った鞄を肩にかけながらとぼとぼと歩く。




なんだか、無駄な時間を過ごしてしまった気がして仕方がない。


外を見ると、日は沈み始め、うっすらと暗くなってきている。


時計を見ると時間は6時15分を指している。


それを見てしまうとますます無駄な時間を過ごした気分になる。




おまけに無理をして入ってしまった学校なだけに勉強も難しく、課題も多い。


帰ってからそれを片付けなければならないのかと思うと大也の気持ちはいっそう重くなる。


合格発表の時にすでにみゆきには言われていた。




『ちゃんと勉強しなさいよね。でないと、すぐに進級できなくなっちゃうわよ!』




あの時の言葉が大也の頭を流れる。


(さすがに、無理言って入ったのに、進級できないってのはやばいよな。受験の時、散々親を泣かしてきたし………。これ以上は………)


意外と彼は親に対しては優しかったりするのだ。




憂鬱な思いで大也は昇降口で自分の靴を出し、履き替えようとする。


見る限り、もうすでに誰もいないのがわかる。


下駄箱には上履きばかりが入っていて、靴が入っている人はいない。





大也は周囲を一望する。


あまりの静寂さが自分だけが学校に残っていることを印象づける。


人知れずため息が出た。


自分自身、なぜため息が出たのかもわからないほど自然に………。




大也は気を取り直し、帰ろうと踵を返す。







「………ええ。誰も……い…………大丈夫………」