「あはは。別にそういう意味では………」


舌を出しながら苦笑いをする深青の顔を自然と見れることに大也は気づく。


(あれ? 俺、なんともない………。いつもどおり、話してる。な~んだ。ただの気のせいか)


心の中で人知れず納得し、安心する大也。


まだまだ、子供の彼には自分の気持ちの変化を自覚することは遠いことのようだ。


「それより、見覚えあるの? 詳しく話して」


なかなか真実を話そうとしない大也に深青は焦れる。


「え? ………ああ。一瞬だったから自信はないけど………」


大也は思い起こすように遠くにいる一条香織を見る。


だが、自分の見た光景は別にこれといったものではなく、日常的にはある光景だ。


それが、関係しているとは大也には思えない。


「でも………、別に普通だったけど………」


「あんたの意見はどうでもいいの? 聞いてからちゃんと考えるから。さっさと話しなさい!」


大也の意見は優奈の反論で消されてしまう。




ハァとため息をついてから大也はあの日のことを話しだした。







 そう、あの日のことを………。