いつもなら、深青が優奈の行き過ぎた行動を抑える役目を負うのだが、今は一条香織の件でそこまで気が回らないらしい。


それが、大也にとっては不運だったと言うしかない。


「……さっきは、髪縛ってて雰囲気変わってたから気づかなかったんだって………」


「髪を束ねるぐらいで感じってそんなに変わるか~?」


納得がいかないのか優奈は大也に噛み付く。


「そんなの毎日会ってる知り合いじゃないんだから、見間違えたりすることもあるさ………。って、言うかいい加減、この手を離してくんない?」


「何、もっともらしい言い訳してんのよ! あんた、わかってんの? あんたの命が狙われてんの! もっと、危機感持てっつうの! 見間違いなんて起こさないぐらい」


はっきり言って、優奈の言うことはただの言いがかりだ。


だけど、言いながらヒートアップしてきたのか優奈の大也の胸ぐらを掴んだ手はどんどん力が入っていく。


「うわわぁあぁ! 優奈、ストップストップ! これ以上したら、正木くんが本当に死んじゃうよ~! まだ、何も聞いてないのに」


さすがに気づいたのか深青が止めに入る。


「あっ、それもそうね」


優奈はぽいっと手を離す。


やっとのことで開放された大也は思いっきり空気を吸う。


「はぁぁぁ。本当に死ぬかと思った。………って、如月。お前、俺が何か話してたら止める気なかったのか!」


大也の中にはその言葉がひっかかったらしい。