優奈は同じようにサッカーをしている男子の中で大也がこちらに視線を向けていることに気づく。
視線は明らかにこちらに向けられていた。
だが、自分の視線と大也の視線が合わない。
優奈は大也の視線の先を追うように目線を静かに向けていく。
その先には、一心に一条香織を見ている深青の姿があった。
(まさか………)
なぜか、襲ってくる恐ろしい考えを打ち消そうと優奈はブンブンと顔を振る。
「どうしたの? 優奈。いきなり………」
隣でいきなり髪を振り乱しながら顔を振る友人の姿に深青は不審者を見るような目で問う。
「え? いや…………」
まだ、確定ではなく自分の中だけの考え。
それに、それが正しくても優奈の口からは決して言えないことなのだ。
優奈は苦笑いを浮かべる。
これでごまかせるとは到底思えないが、今の優奈にはそうすることしかできないのだ。
あわあわと内心思っていた優奈だが、それとは裏腹に深青はあっさりとスルー。
深青の頭の中は今それどころではないのだ。
その時、何を思ったのか深青は急に男子がサッカーをしている方を見る。
優奈もまた深青が見たほうを目で追った。
予想はしていたが………、急に自分のほうを向いた深青と目が合ったのだろう。
大也が明らかに動揺している態度が見て取れる。
(正木…………。あんた………、誰でもその姿を見ると気づくぞ………)
優奈は呆れた顔で大也のおかしな態度を見ていた。
「正木くん…………。もしかして………」
隣に座っていた深青が急に立ち、恐る恐るぽつりと呟く言葉に優奈はドキッとした。


