「だけど、何?」
優奈は深青の言葉の続きを待つ。
(深青が疑問に感じるのなら何かある)
それは長年の付き合いからくる絶対の信頼があるからこそ言える言葉だ。
実際、今までにも深青の勘が外れるようなことはなかった。
「何もないからこそ怪しい。まるで、私たちの存在を知ってわざと隠してるような」
「それは、思い過ごしでしょ。第一、力を持つものが隠すようなことできるの?」
「高等な力を持ってたらね」
「でも………、深青ほどでも、気づけないぐらい?」
「そりゃ、私より強い人もいるだろうから」
(よく言うよ)
優奈は深青をねめつける。
どう考えても深青より強い人がいるとは優奈には思えない。
昔、よく遊んだというかいじめた麻生綺羅(あそうきら)のことを深青の父も深青も自分たち以上の力を持つものだと言っていたが、目に見えて強い力を持っているようには思えなかった。
(………というか、少しでも強い力を見せてくれたら、自分もまだ綺羅を認め、あんなにいじめることもなかったのだろうが………。あいつ、私よりも完璧弱かったもんね。絶対、信じられないよ)
思い出すことで優奈の中で何かに火がついたのか拳を作り、プルプルと手を震わせている。
(何年経っても、あの情けなさを思い出すと腹が立つわ。もう、あんまり思い出すの止めよう。腹が立つだけだから)
そう思い、ふと顔を上げた拍子に顔を右側へと向けた。
(あれ? 正木?)


