ピイィィィィ―――――――――!
「交代! 次、1組の②と2組の①」
体育教師がホイッスルを吹き、深青と優奈はグラウンドの端へと歩き、座り込む。
「あぁ、疲れた。やっぱり、体育なんて大嫌い」
体操ズボンからハンドタオルを出し、額をふきながら深青は呟く。
その声には体育への深い恨みが溜まっているようだ。
「あいかわらず、派手にこけたね」
「好きでこけたわけじゃありません。だいたい、体育って授業で必要なわけ? 別に、勉強するわけでもないのに………」
体育への文句を言いながらも深青の視線は今、サッカーをしている女子の1人に向けられていた。
手足が長く、ウェーブがかった長い髪を1つに束ねている彼女は見るからに女らしさを滲み出していた。
美少女といえばそうだが、優奈が凛としたお嬢様系だとすると彼女はポワンとした柔らかいイメージの男とすれば守ってあげなくてはいけないと使命感を思わせるような対照的な印象だ。
「どう? 何か感じる? 彼女」
「う~ん。彼女自身からは全く何も感じない………。だけど………」
優奈は深青の真剣な表情を見、その先にいる相手に視線を向ける。
彼女は今まで休んでいたのなど嘘なように屈託ない笑顔でサッカーをしている。
そこからは、暗いものなど何もないように思えた。


