「深青! 行ったよ!」
「はいっ!」
優奈からのパスを受け、深青は自分の元へと飛んでくるサッカーボールめがけて走っていく。
ボールがポンポンと軽くバウンドしながら深青の目の前へとやってくる。
と、そのリズムと速さにあわせ、深青はボールを蹴るために右足をゆっくりと後ろへと引き勢いづける。
そして…………。
深青の右足はゆっくりとボールへと近づく………が、何ミリという差でボールには触れずに空を切る。
だが、勢いづけていたこともあり、重心がずれ、お尻から後方へと尻餅をつく形で倒れる。
「いったーい!」
その光景を見ていた優奈は右手で目頭を押さえため息をつく。
「………またか………。」
深青とは長い付き合いになる優奈だが、深青の運動神経だけはわからない。
どう考えても、力を使い妖しき者達と戦う深青は、完璧なまでのすばやく、人とはかけ離れた運動能力を持っているように思うのだが、日常生活での深青にはその時に繰り出される運動能力は全く皆無のように見える。
一体、どういう仕組みになっているのだろうか?
1度、深青に聞いてみたことがあるが、深青は涼しい顔で
『力を使う時だけ、私、超人になるのかも。』
などという、納得しにくい回答を返しただけだった。
だから、優奈も深青自信わかっていないという自己回答を生み出し、なんとか納得したのだが………。
やはり、こういう光景を見るとそのたびに思ってしまう。
なぜなのだと。
そして、その思いは遠くから見ていた大也も同じだった。


