「それにしてもさ………、本当、正木どうしたの?」
「いや、私に聞かれても………」
1限が始まる前の大也の不思議な行動がまだ優奈は気になるのか、それまで一緒にいた深青にしきりに聞いてくる。
だが、全く意味がわかっていないのは深青も同じなので答えられるはずもない。
「う~ん、確か、おととい遅くまで引き止めてごめんって話だったはずなんだけど………、どうしてああなったのか………」
深青はさっきの記憶を思い起こすが益々わからなくなる。
一体、これだけのどこに先ほどの大也の行動へとつながるのか。
全く検討がつかない。
それは優奈も同じようだ。
「それだけ………。全く意味わかんない。あぁー、もういいや。別に害はないだろうし。ところで、ちゃんと見てよね。一条さんのこと!」
「うひゃっ!」
優奈はそう言うと深青の脇をチョンと突いた。
その拍子に深青は色気のないどこから声を出したのかというような声を出す。
ちょうど、次の時間の体育のために着替えていて服も着ず、下着姿だったのが一段と感触を与えたようだ。
「もう! 優奈! 余計なことしないで!」
今回はどういうわけか、いつもなら怒らない深青が真剣な顔で怒っている。
「ごめんって………。ちょっとした冗談じゃん」
「今、真剣な話してたんでしょ。そんな時に冗談はやめて。考えが吹っ飛んじゃったじゃない」
「え? 本当? ごめん」
さすがの優奈も深青の真剣さにたじろぐ。
滅多に怒ることがないために効き目があるのだ。
シュンとしている優奈を見て深青は大きく息を吐き、服を着る。
「一条さん、ちゃんと教えてよ。私、ちゃんと見てないから」
深青の声に優奈の沈んでいた顔がみるみる晴れていく。
「もちろん! あっ、着替えすんだ? じゃあ、さっそく行こう!」
言い終わるのが早いか優奈は深青の腕を引っ張って教室を出ようとかけていく。


