「ああ………。全く。一応、気を張り詰めてたんだけどさ、なんだか拍子抜けだぜ」


「何もなくてよかったね。でも、まだ油断はしないでね。敵の目的も何もわかってないんだから。狙われてないという確証はないから」


深青は真剣な表情で大也を諭す。


その言葉の意味をわかっているのかいないのか大也は笑って軽く受け流す。


「わかってるって! それよりさ、俺、聞きたいことがあるんだけど」


(本当に、わかってんのかな?)


深青は内心不安を隠せない。


だが、今の状況で何を言っても本当にわかってくれるのかも疑問なところだ。


深青は大きく息を吐いて、あえて言うことを止めた。


「何?」


「初って、本体は別のところで眠ってるって言ってたけど、どこにいるんだ?」


どうせ、単純なことだと思っていた深青は予想外の重い質問に意表を突かれる。


「どこって…………、それは………」


大也にしてみても軽い気持ちで聞いたことだった。


だが、目の前の深青は明らかに動揺している。


自分が聞いてはいけないことを聞いたのではないかという思いが大也を襲う。


「いや………、言いたくないなら別にいいけど」


「え? いや、別に言いたくないってことはないよ。うん」


必死に言葉を紡ぐ。


その深青の姿が余計に大也には動揺しているように映る。


「えっと………ね。………幼なじみ。私たちと同じように力を持った………。その子のところにいる」


深青は気づいていないだろう。


自分が今、どんな表情でそのことを語っているか。


まるで、大切な宝物のことを語っているような………、愛おしいような。


「力……………」


大也は無表情にその言葉だけを繰り返す。


「うん………。その子には、秘められた私以上の力がある。だから………危険が迫ったら初が眠りから覚めるようにしてあるの」


「へえ………。あのさ、それって………お」