「じゃあ、悪いけどこいつらのことよろしくな。おふくろ」


「はいはい。そんなに何度も言わなくてもわかってるわよ。それじゃ、出るわよ」


車の外で手を振る大也とみゆきを置いて、深青と優奈を乗せた大也母が運転する車は発進した。


「すみません。わざわざ送っていただいて」


深青は助手席で頭を下げる。


「ああ、いいの。大也が無理にいてもらったんでしょ。それに、私も如月さんとはもっとお話したかったし………」


「…………え?」


なんとなくだが、そんな予感はあった。


だから、これというほど驚くこともないのだろうが、まだ優奈も後ろにいる状況からくるとは思わなかった。


「それは………何でしょうか?」


深青は目を閉じ、ゆっくりと問う。


声のトーンはいつもよりも静かでそれでいて凛としている。


それは、高校生の深青ではなく如月の者としてある姿だった。


「まるで、別人のようね。雰囲気とか………。1度会ってなかったら、驚くのを通り越して別人だと思い込んでしまいそうだわ」


「え?」


深青だけではなく、後部座席に座っていた優奈も身を乗り出してくる。


「私に会ったことあるんですか?」


深青は真剣な表情で前を向いて運転している大也母を見る。


「ええ………。夏川優奈ちゃんだっけ。あなたにもね」


「私も?」


優奈と深青はお互いに顔を見合す。


その様子を横目で見ながら、満足そうに大也母は笑う。