「おふくろ。帰ってたのか?」


一瞬の固まっていた空気が、大也の登場で動き出す。


「え? ええ………」


大也の母は引きつった笑顔を見せる。


急いで表情を戻そうとして失敗した顔だ。


何が彼女にそんな表情をさせてしまったのか深青はわからなかった。




だが、自分のことで彼女は驚いていたのだ。


それだけは確信が持てた。


「あのさ………、こいつら、クラスメートで………その………」


しどろもどろに話す大也を遮るようにして大也母は話す。


「さっき、如月さんから聞いたわ。そんなに深くは追求しない」


はっきりと言い切るその言葉に深青は疑問を抱く。




確かに自己紹介と遅くにお邪魔している礼の言葉は言った。


だけど、それだけですぐに今の言葉のようには納得できないのが普通だ。


なぜ、簡単に引き下がる?


それだけの理由がある?


先ほどのこともあり、深青は不自然な戸惑いに陥る。


「深青。どうしたの?」


大也と一緒に下りてきていた優奈が考え込む深青を気にかける。


「あ、ごめん。なんでもない」


深青は笑顔を作る。


「本当に? 何か難しそうな顔してた。まあた、考え込んでるのかと思ったけど」


(するどい………)


内心、優奈の鋭さにどきりとするものの深青は冷静を装う。