「あら? ………みゆきちゃんとどちら様かしら?」


品のよさそうな顔の女性がみゆきと深青の顔を交合に見る。


「おばさん! おかえりなさい。え~と、大也は…………たぶん、上にいると思いますけど………」


みゆきは女性の傍に駆け寄ると手振りを入れながら必死に説明する。


その様子を見ていた深青はゆっくりと立ち上がり2人の傍へと近づくと一礼する。


「夜分、遅くにお邪魔しています。私、正木くんのクラスメートの如月深青といいます」


女性への挨拶までの一通りの流れは、今時の高校生が普通に醸し出せるものではない。


卒のないゆったりとしていて品のある動き、一見、どこの令嬢なのかと思ってしまう。




それは女性も同じようだった。


「まあ、今時めずらしいぐらいきちんとした子ね。大也の母です」


にっこりと微笑んで大也の母は返す。


一瞬、雰囲気が和んだかと思ったのだが、女性は言葉を続ける。


「でも、女の子がこんな夜遅くまでいるとお家の方が心配なさるわよ」


正論に深青は苦笑する。


「そのとおりですね。帰ってからたくさん叱られるつもりです」


普通の子なら、反論することもできず怖気づいてしまうところだが深青はまっすぐに大也の母の目を見、話す。




その様子を見て、みゆきはまたまた深青の姿に驚きを隠せずにいた。


「え~っと………。きさ………ら……ぎ…………」


大也の母は深青の顔を見ながら、言葉の途中で言いよどむ。


「はい?」


深青は自分のことを言われていると感じ、一応返事だけでもする。


だが、大也の母に反応はない。


ただ、驚いた表情で深青の顔を見ているだけだった。