こいつにとっての近辺の範囲は一つの県まるごとか…。


なるほど、ハッカーと言っても、現在ハッキングしている状態の人間が対象者なんだな。


それにしても情報が曖昧だな。
ハッカーの名前と使っているコンピューター名、そしてハッキングの記録さえわかれば後は大丈夫だろ、みたいな状態だ。

あの警官達が求めているのは、詳しい住所や職業も含まれている。


全く…世話のやける連中だ、また少し弄くらねばならない。


「AKI、お前は一応試験に合格した」


『ありがとうございます』


「だが覚えておけ、合格と言ってもラインはスレスレだ。この調子ではまだ警察官とは呼べない」


『博士、質問があります』


「なんだ、言ってみろ」


『どのような対策をとれば、僕は警察官になれますか?』


「…そうだな、まずはハッカーを捕まえてみろ」



話はそれからだ、と私は画面から離れた。

今手に入ったハッカーの情報を警察署に送る。


逮捕者が一人でも現れれば、この実験は成功だ。


いずれ警察署からお呼ばれされるだろう。



『博士、宜しいでしょうか』


「なんだ、手短にしろ」


『ズボンに穴が空いています』


「……………」