「よぉ~柊~」

「…小林…」



背後から現れた男、同じ科学者の、小林治郎(こばやし じろう)だ。


私より若いくせしてこの親父臭さ…同じ科学者として働く仲間とは言え、私の周りを彷徨くのはやめてほしいものだ。



「ん?完成したのか?それ」


「一応はな。最も、まだ試作品だが」


「すんげぇじゃないの~ちょっと見せろよ」


「おい、下手に弄くるなよ。質問程度に留めておけ」


「あ?こいつ、質問に対してちゃんと答えるのか?」


「音声プログラムは入れておいた。辞書の中身を叩き込んだだけで、まだこいつ自体に自我はない」


「へぇ~おもしろいな。おい、名前を言ってみろや?」


『初めまして小林博士。僕の名前はAKIです』



きちんとプログラム通りに自己紹介するAKIに驚愕する小林。

自我こそはないにしても、自己紹介位はさせないと人間は警戒してしまう。



「いいねぇ~やっぱあんた天才だよ、柊~」


にへらと笑う小林は、一度私の方を見てそう言うと、再びAKIの方を向いた。



「お前、好みの女の子とかいねぇの~?」

「やめないか、アホ」


『質問の意味が理解出来ません』



コンピューターに対して、何が女の子だ。

やはりこの男は不粋で女好きだな。