~瑞輝side~

 生徒を見送り、職員室に戻る途中に高野先生にさっきの二人について尋ねた。


「高野先生」
「何ですか?寺島先生」
「さっき、手話で話していた男の子は誰ですか?手話で話してるので少々気になりまして…」
「ああ。美雨に話しかけたのは邦枝裕樹、美雨の従兄です。で、一緒に行ったのは彼の弟の邦枝直樹。彼も聴覚障がいがあります」
「そうなんですか……」

 従兄弟ということで、手話が出来るということが理解できた。でも、弟の直樹はなぜ話せるのか、俺にはそれが不思議でたまらなかった。


「寺島先生。高野美雨のことを特別扱いしないよう、お願いしますね」
「…はい」


 二校目の学校に勤務ということもあって、校長が言っていることがすぐに理解できた。

 でも生徒一人一人に個性があって、得意不得意が人それぞれ違う。だから同じように指導し、教育を受けるなんてどう考えてもおかしいのに、とある生徒一人に補習や別プリントを用意することが特別扱いになぜかなってしまうのが今の教育の現状だ。