~瑞輝side~

 今日が締め切りの進路希望書を数人の生徒だけが提出していない。その中に高野がいた。



「やっぱり考えてしまうよな……」


 そうつぶやき、回収した進路希望書に目を落とす。


【先生、持ってきました】
「ありがとうな。どうかしたか?」
【いえ……何も】


 一礼して職員室を出て行く高野を見届ける。


「寺島先生。ちょっといいですか」
「あ、はい」


 高野先生に呼ばれて応接室へ。


「美雨の進路なんですが」
「はい」
「寺島先生自身はどうお考えですか?」
「僕ですか?」
「ええ。担任としてお聞きしたいと思いまして」
「……これは僕個人の意見ですが、本人の意志を尊重したいと思っています。他の生徒同様に学校に見学に行き、出来るだけ、本人が望む通りにしてあげたいと思っています」
「……」


 高野先生はこれをどう受け取ったかはわからない。けど、俺自身が思ってることをそのまま言った。

「ありがとう。寺島先生……」
「え?」
「美雨のことをちゃんと見ていてくれて、嬉しいよ」
「いえ。僕は教師として当たり前のことをしているだけですよ。だから、お礼なんて……」
「寺島先生に相川先生……。美雨は本当に良い先生に巡り会えて、この学校に入れて本当に良かった」



 涙目になりながら俺に感謝を述べる高野先生。それを見ていると、残された一年半という年月に重さを感じる。