午前だけの出校日は直ぐに終わる。相川先生の所に珍しく行かずに教室で裕くんを待つ。




「高野さん。ちょっといい?」



 クラスの中で最も目立っている女子生徒、川野遊璃。誰一人として美雨のことを気にしないのに急に話しかけてこられ、身体が固まってしまう。



【何?】
「邦枝先輩とはどうなってるの?」


 邦枝先輩は裕樹ことだ。幼稚園の頃からやってるサッカーの為に昔からモテていた。


【どうって、裕くんは従兄だよ?】
「本当にそれだけ?」
【うん】
「じゃあ……寺島先生のことは?」
【先生?】
「そう、どう思ってるの?」


 そんなことを考えたこともなかった美雨は、なんて答えたらいいのか分からなかった。



 けど、目の前にはじっと見つめる遊璃の姿。



【先生として、尊敬してるだけだよ】



 美雨は気づいていた。先生に対する好意も、彼女が先生に対し好意を抱いていることにも。
 でもそれは、口に出してはいけない思いだということも認識していた。