永遠の愛─先生の声─

~瑞輝side~
 高野は少し離れた席で従姉の美樹さんと映画館で買ったパンフレットを見ながら、俺がお兄さんと零の話しが終わるのを待つことにした。



「美雨さんのお兄さんということは高野先生の息子さんですか?」
「はい。でも、俺らが中学生のとき、親父は違う学校でしたけどね」
「”ら”?」
「はい。俺のほうが4ヶ月早く生まれたので、従妹ですけど同い年なんですよ。美樹とは」
「そうなんですか…」
「それで、何の用です?用があって俺を呼んだんですよね」
「ああ。実は」



 お兄さんは一度だけ見たお母さんに似ていると思いながら、義樹さんに例の苦情と補習について訊ねた。




「知ってますよ。小学校高学年から毎年ありましたから」
「それで、どう対処していたのかご存知ですか?」
「そうですね。小学校時代の対処法は使えないでしょうから、去年の話をしましょう。まあ、やってほしくはないですが」

 お兄さんが去年のことについて話してくれたが、今年は高野先生は三年生の担任だ。それはどう考えたって非現実的だ。


「あの、寺島先生」
「なんですか?」
「今、どのような対策をしていますか?」
「あ、はい。今は…」


 今現在、行なっている資料を作る作業も実際苦痛だという先生もいる。科目によっては初めからそう行なっている人は良いが、突然やり方を変えられてスムーズに出来る教員はほんの一握り。おまけに全てのクラスで同じでやらなくてはならない。




「教師からも生徒からも苦情が来なければいいのですが…」
「ですね」
「では、失礼しますね。今後もよろしくお願いします」




 そう言うと義樹さんは美雨と共に喫茶店を出て行った。