「ただいま」
「お帰りなさい。新年度スタートでしたけど、どうでした?」
「美雨の担任は良い人だよ。苦情が来ないといいんだけど」
「そう、良かった……。そうね」


 去年、苦情が出たことは知っている。普通の親なら教師が言わなければ知らないだろうが、仕事上必ず苦情があれば美雨の父親である高野先生の耳に入ってくる。


「今年は三年生の担任になったし、出来れば……俺に全てを押しつけないでくれないでほしい」


 去年の苦情は受け入れて授業を元に戻した。そして、美雨には補習をすることにしたのだが、補習の時間を作ってもらえず父親の高野先生が休みの日や帰宅後に勉強を教えていた。


「あ、お帰り。おじさん」
「ああ、ただいま」


 お風呂から上がってきたばかりの美樹と美雨。


【お帰りなさい。お父さん】
「ただいま。美雨」

「美樹ー。ご飯だよ」
「今、行くー」




「義樹は?」
「もうすぐ帰ってくる」


そんな話しをしていると、お兄ちゃんが帰ってきた。


「ただいまー」
「お帰り。遅かったな」
「うん。新入生歓迎会の準備が手間取って……」


 お兄ちゃんは生徒会に所属している。小学校では児童会、中学でも生徒会に所属していた。


「さ、ご飯食べましょう。着替えるなら着替えてらっしゃい」