――その後、新杉さんは、何も言ってくれなかった。


「じゃあ気をつけて」

「……はい」


駅まで送ってもらって、にこにこと手を振る新杉さんに頭を下げる。
この後、新杉さんはまだ大学に用があるらしく、あのあと、終始にこやかだった新杉さんに何も言えなかったあたしは、このままさよならするってことに、すごくモヤモヤした気分でいっぱいだった。


にこやかな新杉さんの雰囲気が崩れたのは、あの一瞬だけ。


「何が聞きたいの?」とか、「どんな話してたの?」とか。
怒っててもいいからその話題を続けてくれたら言い訳もできたのに、席についた新杉さんは、それ以上あたしに尋ねてくるってこともなく、いつもどおりのニコニコ顔だった。


なんでもいいから聞いて欲しいのに、終始笑顔を崩さないから、その笑顔に距離をとられてるような気になる。