夏休みの恋人

「あーもういいって!それより淳一、オレのノート預かってない?」


いたたまれなくなった俺は、無理矢理話題変更を試みた。


「おまえのノート?」

「そう。昨日気付いたんだけどさあ、大分前に気に入って買ったノート、歌詞書くように置いてたはずなんだけど、それもなくなってて……」


ノート以外にも、休み前に確かにあった物がいくつかなくなったり減ったりしている。

ささいなことかもしれないが、心当たりが全くないのは、俺の記憶喪失の確かな証拠だ。



俺はギターを趣味としている。



それはあくまで趣味で、そんなに熱心に入れ込んでいたわけでなく、気が向いた時にする程度だ。

しかし、記憶を失くしていた時も俺はギターを弾いていたらしい。

それもかなり熱心に。

予備に置いていた爪も減らす程。

訊いたノートもギターで曲を作って、歌詞を書き込んで使ったのかもしれない。



しかしせっかく作ったモノを捨てることはないと思うのだが。



かなり気に入ったデザインのノートだし。



昨日見つからなくてちょっと凹むくらい。



捨ててないのだったら、淳一に預けたのではないか?