目を覚ますと、そこは黄昏色に染まった白の空間だった。



窓のブラインドの隙間から射し込んだ夕陽の光が、ぱりっとした白いカーテンとベッドカバーを染め、少しひび割れた白い壁と天井を染め、オレンジ色の部屋に彩っていた。



俺はすぐに、ここが病室だということがわかった。

今まで入院したことはなかったが、テレビなんかでよく観るからだ。



でも何故、俺がこんな所にいるのかがわからない。



とりあえず起き上がろうと体に力を入れた時、ふと左手に抵抗と重みを感じた。



首を動かして見やると、紅い髪の女の子がいた。



顔は伏せていて見えないが、紅色の長い髪はベッドカバーの上に滑らかな曲線を描いて散らばり、それを綺麗だと思った。



その女の子は眠っているようで、微かに静かな寝息が聞こえる。



左手の違和感は、その女の子が左手をしっかりと握っていたからだった。



左手をそのままに、女の子を起こさないように、腹と右腕に力を入れてゆっくりと上半身を起き上がらせた。


『っ………ぃつ………!?』


瞬間、頭に痛みが走り、思わず呻いた。

反射的に頭に手をやると、包帯を巻かれていることがわかった。


『ん………』


俺の声に、紅い髪の女の子が起きた。



あ、やべ。



反射的にそう思ったが、だからといって為す術もなく、俺はただじっと彼女が身動くのを見守っていた。



彼女が、ゆるりと身を起こした。



紅い髪が、劇舞台の深紅のベルベットのカーテンのように、上がっていった。



彼女と、目が合った。



そのはずなのに。