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『あんた、誰?』



一度目は、病院の屋上。



橙色に染まる雲がかかった黄昏の空の下で。



大嫌いな煙草を片手に、あなたは無邪気に訊くものだから、大人の振りをしてシガーチョコレートを持った子供にしか見えなかった。



二度目は、病室のベッド。



窓から夕日の光が零れ広がった黄昏色のシーツの上で。



目覚めたあなたは一度目と同じ顔で無邪気に訊いてきて、ああ、あなたはあなたなんだと、思った。






ねぇ、慶。



あなたが記憶を失ったことを喜ぶ恋人は、あなたを愛していなかったのかな。



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