「若宮君、もう桜の花全部散っちゃったね。」
佐久間が隣で残念そうに言う。その言葉に僕は頷いた。
あれから約1ヶ月が経ち5月に入った。
5月に入ると桜の花は散ってしまい僕は外を眺めることも出来なくなってしまった。
でも、桜を眺める時間がなくなると急に勉強のほうが見ていないとついていけないほどになっていた。でも、それなりに予習・復習をしている僕にとってはどうって事なかった。
けど、気になることが1点・・・・・隣の席の佐久間だ。同じ理由で入学した佐久間にとって勉強はついていけないほどらしい。いつも教科書の問題と格闘中・・・・そんな佐久間を見ているとなんだか助けてあげたくなった。別に好きとかそういう感情はない。ただ、入学して初めて僕に話しかけてくれた優しい子。そんな佐久間に何かしてあげたいと思ったからだ。そう考えているうちに時間は過ぎたのだろう。1時間目が終わった、と同時に佐久間は机の上で腕を組み顔を埋めていた。そんな佐久間に僕は思い切って話しかけた。
「佐久間、さっきの数学でわからないところあった?」
一瞬ビックリした様子を見せたがすぐにいつもの笑顔に戻った。
「うん、いっぱい。若宮君、あの勉強教えてください!」
捨てられた子犬のように縋り付いてくる佐久間が何だか可愛く思えてきた。
ドキンッ・・・・・まただ、入学してから僕はちょっとおかしい。佐久間と話しただけで不思議な衝動に陥る。だって、そんなこと考えるより今の僕には佐久間に勉強を教えるということのほうが先だから。
心配そうに僕を見つめる佐久間の頭を優しくなでながら僕は言った。
「わかった。心配しなくてもいいよ、でどこが分からない?」
僕の行動に少しビックリしたのか佐久間の様子がいつもとちょっと違う気がする。
でも、わからないところを一生懸命解こうとしている姿を見たらそんなこと気にならなくなった。
それから佐久間には分からないところをすべて教えてあげた。佐久間はいつもの笑顔で、
ありがとうって言ってくれた。でも、佐久間は心配そうに呟いた。
「でも、再来週は初めての中間テストだし。・・・・平均以下だったらどうしよう。順位もでるし・・・・・・・。」
ああ、そうか。再来週は中間テスト、勉強が苦手な佐久間にとっては大きな壁だな。・・・何か僕にできることはないだろうか?