「トントントン」
リビングに心地よい一定のリズムで音が流れてくる。
千尋は料理が上手なんだな・・・・・・
「上手なんかじゃないよ、ただ料理が好きなだけ♪」
「え?俺、今口に出してた?」
「うん。俊哉君の独り言っておもしろいね。」
そう言って千尋はクスクスと笑った。
そうか、口に出してたか・・・・・・・・。
これからは、気をつけないとな。
それから俺はずーっと千尋を見つめていた。
時折、千尋は俺に微笑みかけてくれた。

「俊哉君、オムライスできたよー♪」
千尋はいつも以上にかわいらしい笑みを浮かべていた。
机の上に出されたオムライスは、本に載っているようなとても、レベルの高いものだった。
俺は両手を合わせて「いただきます」を言ってから千尋の作ったオムライスを一口分スプーンに盛り食べた。・・・・・味は、
「美味しい、どこかの一流レストランで食事をしているような気分だよ。」
俺は夢中でオムライスを食べた。
「ふぅ、好かった。美味しくないって言われたらどうしようかと思っちゃった。」
千尋の顔は希望の笑顔で満ち溢れていた。
「また・・・作ってほしいな。千尋の手料理・・・・・・」
千尋はビックリしていたようだったけどすぐに、いつもの笑顔で「いいよ」って頷いてくれた。

それから俺たちはものすごい集中力で勉強を始めた。・・・・って言っても今日は数学だけだなんだ。まずは、千尋の苦手な数学を身に着けることからにしたからね。
・・・・どれぐらいの間勉強しただろう。気づけば6時の鐘が鳴っていた。
「よし、じゃあ数学はお終い!!千尋よくがんばったね」
そう言って俺は千尋を抱きしめた。
突然のことに驚いたのか千尋の体がピクッと跳ね上がった。
「俊哉君のおかげだよ。ありがとう♪明日もよろしくね」
「ああ」
そうだった、今日から2週間毎日こうやって千尋と勉強会をするんだ。
その後、俺は千尋を家まで送った。
離れるのは寂しかったけれど、また明日会えると思うと嬉しくなった。