シーソーが揺れてる

そうだ、捨ててしまおう。これを捨ててしまえば楽になれるかもしれない!偽りに見える全ての過去も払拭できるだろう。
春香は薄目を開くとピアノの前へと前進した。ピアノの前に立った丁度その時、部屋の戸が開いて母が入ってきた。
「あら、ピアノでも弾くの?」
母は穏やかに話かけた。しかしそんな母とは対照的に春香の心は逆立っていた。
「これ捨てて!」
春香はそう叫んでいた。
「えっ?!」
母は驚きのあまり顔を真っ赤にさせた。
「急にどうしたのよ」
引き続き母は春香を問いただした。春香は唇を噛みしめながら母をじっと見つめた。
「いいから捨てて」
懇願するその声はとても低く、少し震えていた。
「何で?だってこれお爺ちゃんが春香にって買ってくれた物なんだからそんな簡単に捨てられないでしょう?」
「私もうピアノなんか見たくないし弾きたくない」
春香の声がさらに震えた。