シーソーが揺れてる

「1度聞いてみたら?」
母はにこやかに言う。
「うんまあ聞いてみるけど・・・」
「でも今自動車関係は不景気の煽りを受けてるから厳しいんじゃないか?」
新聞をめくりながら父は二人に指摘する。
「そうかもしれないねえ」
「じゃあ何のバイトならいいわけ?」
少し投げやりがちに春香は父に尋ねた。
「まっ、コンビニかファーストフード店でいいんじゃないか?」
「はー・・・」
父からのあまりに素っ気ない答えに春香はため息をつくしかなかった。

食事を終えて自室に戻ると春香は携帯を開いた。
やはり良太からの連絡は無かった。あれから1度も携帯が鳴っていないのだからそりゃあそうだろう。
フロワーの上をベッドまで歩く。その途中、ある物が春香の目に飛び込んできた。
それは今までなるべく見ないように、見ないようにと避けてきた物だ。
でも無理だった。
それもそのはず、その物は部屋の東側のスペースを一人で陣取っているようなとても大きな物なのだから・・・。ピアノだった。