シーソーが揺れてる

直人からの電話を切ると、春香は携帯を閉じずにそのまま良太に電話をかけた。
今すぐ良太に何か言わなければ!そう思ったのだ。しかし、
「おかけになった電話は現在・・・」
例の女性アナウンスが流れる。だが春香は少し安心した。何か言わなければと思っても、どんなことを言えばいいのか、全く思いつかなかったのだ。
春香は諦めたように電話を切ると携帯をズボンの右ポケットに押し込んだ。そして再びラジオのスイッチに手を延ばした。

それからしばらくして夕飯になった。
食卓に行くと、いつ出前を取ったのか、そこには春香の大好物のお寿司が並んでいた。
父貴之も帰って来ていたが、久しぶりの春香の帰省をそれほど喜ぶ様子もなく、お寿司をつまみにビールを飲みながら新聞を広げていた。
「ねえあんたバイトするって言うけど何のバイトするの?」
父の前に氷を入れたグラスを運んできた母が春香に尋ねる。
「うーんまだ特にこれって言うのは考えてないけど・・・。一応広美からはメイド居酒屋のバイトを紹介された」
「メイド居酒屋?」
母は目を丸くさせた。