俺の質問に何を言っているのかと驚いた顔をしたが、すぐに答えてくれた。

「大事になんて……されてないわ」

そう言った和華菜は無表情だったが、震える声にはフツフツと込み上げる怒りが見え隠れしていた。

「嘘だろ?……寿はお前のこと……」

和華菜の言葉に今度は俺が驚いた。

一方的な愛だとしても、その愛の矛先は和華菜に向いているはず。

俺は人形の様に大事にされているのだと思い込んでいた。

「彼が私を大切にする時は決まって仕事関係の人と居る時と自分の気分が良い時だけ。誰かの前で私に優しくしても、あくまで私はお飾りでしかない。隣に居るのは私じゃなくても容姿が良ければ誰だっていいのよ」

和華菜は近くに置かれていた、おしぼりを強く握り締める。

話を聞くだけで沸騰した湯の様に俺の怒りはグツグツと音を立てる。

俺から最愛の和華菜を奪っておいて、酷い扱いだ。

大事にしていないなんて。

……いや、大事にしていたら良いという訳では無いが。

「もう……耐えられない。逃げ出したいのに、気付くと彼の言いなりになってる」

店員がカプチーノを持って来た。