「遅れてなんかないよ。俺が朝ごはん食べるのに早く来ただけだから」

笑って空いた皿を顎で指す。

「もしかしてモーニングメニュー?」

クスっと笑いながら和華菜は俺の前に腰を下ろした。

その笑顔を見てホッとした。

寿に操られていた時期があっても、和華菜の笑顔は俺の知っているものと変わらなかった。

「寿には見つからなかった?」

別に二人で居る所を見られたくない訳ではない。

むしろ、この状態が正しいのだ。

だが今は寿が邪の椅子を所有しているので、何をしてくるか解らない。

なるべく電話があった事、会っている事を知られない方がいい。

「家を出ようとしたら彼から電話が掛かってきて慌てちゃった。でも今日は会議の後に食事に行くから夕食は要らないって連絡だったから、多分大丈夫」

和華菜は空いた皿を下げに来た店員に、いつも注文していたのと同じカプチーノを注文した。

俺はおかわりをしたコーヒーを一口。

「……あの、さ。寿は和華菜のこと、大事にしてくれるのか?」