音や声が聞こえてしまうのは常識の通じない夢では仕方が無いが、せめて重なる二人を視界に入れたくなかった。
起きて……早く目を覚まして、起きてよ私っ!!
「嫌よっ…竜治……私を見て…愛してるの…竜治の事が大好きなのよ……」
何度も体を重ねても竜治は和華菜を愛し続けてる。
寝取る事すら出来ない惨めな私。
「愛してるよ」
涙を流し、耳を塞いで無意味な抵抗をしていた私は未経験の言葉を耳にした。
「えっ……」
思わず目を開けてしまった。
竜治は和華菜の上で動きながらキスの合間に“愛してる”と繰り返し呟いていた。
私の時は囁かれなかった言葉。
よく考えれば行為中どころか一度も言われた事が無い。
虚しさに流れる涙が増えた。
目の前の光景は私にとって生き地獄でしかない。
何故、私は竜治を好きになってしまったの?
何故、愛されないと知っていて好きでい続けるの?