俺は椅子について詳しく知らないし、エレナの様に気を感じ取る事が出来ない。

あの椅子が無くては、俺は和華菜を取り戻せない。

俺にはエレナの力が必要だ。

こんな最低な男の隣に、明日も居てくれるなら俺に力を貸して欲しい。

首だけを動かし、俺に背中を向けているであろうエレナを見る。

エレナは寝返りを打って此方に顔を向け、小さな吐息を漏らしながら眠っていた。

柔らかなエレナの頬に垂れる前髪を耳に掛けてやる。

ぷっくりとした唇を見つめ、キスをしたくなったが、再びエレナに背中を向けた。

『椅子を手に入れるには、その椅子の所有者が所有権を放棄するか……』

寿がオールマイティに近い椅子を手放す訳がない。

『所有者が死ぬか。所有者を失った椅子は自らの意思で必要とされる所へ移動する』

簡単な話、寿を殺せばいい。

俺の必要としている椅子は“殺の椅子”

和華菜を取り戻す為なら俺は何だってしてやる。