「はぁ~…」

今夜何度目か分からない溜め息をつく。

俺は結局、和華菜の名を叫ぶだけで何も出来なかった。

エレナが帰ろうと俺の腕を引っ張るまで俺の足は動かなかった。

今は邪の椅子を手に入れる術が無いので、2人で帰宅したのだが……。

空気が重くて死にそうなくらい、気まずい。

自分の家で息が詰まりそうな思いをするのは初めての経験だ。

気まず過ぎて日付が変わらない内にダブルベッドに横になってしまった。

「はぁ~…」

俺の溜め息に混じって、ダブルベッドの端から小さな吐息が聞こえる。

右側を見ると人一人分のスペースが空いて、エレナの背中が見えた。

性行為をした訳では無いが、エレナはいつも通り裸で寝ている。

カーテンの隙間から差し込む月明かりで、エレナの綺麗な肌で覆われた背中が暗がりに浮かび上がる。

天使の羽が生えた背中に触れようとして、伸ばした腕を止めた。

エレナの肌に触れる資格、俺には無い。