あの日、俺達はホテルを出るとタクシーを拾い俺の家に二人で向かっていた。

狭いタクシーに揺られながら二人は無言だった。

俺は窓の外を眺めているだけのエレナの隣で、物思いにふけっていた。

和華菜と別れてから誰かと体を重ねた事は一度も無かった。

それが理由なのだろうか………。

いつのまにか、エレナを特別な意味で見ていた。

頬杖を突いて流れる景色を眺めているエレナを愛しいと感じていた。

あまり考え過ぎると隣に座るエレナに心を読まれてしまう。

でも考えずにはいられなかった。

黒いワンピースで白さが際立つ艶やかな肌、必要最低限の肉しか付いていない細長い手足、くびれたウエスト。

二重の大きな瞳、栗色の綺麗な髪、内側に巻かれた毛先。

大人の色気を帯びた声、下半身に甘い刺激を与える喘ぎ声、ルージュの光るぷっくりとした唇…。

さりげない優しさを持つ素敵な女性だ。

「気に入った?」

ニヤリと笑ったエレナは俺を見た。

目が合った瞬間左胸の鼓動が速くなったのが分かった。