玄関の新聞受けから朝刊を抜き取り、リビングに置いてある大きなソファーに深く腰掛ける。
特に興味のある記事が無いのでペラペラと、二週間ほど前に買った宝くじの当選結果を探す。
「竜治、当たってるんだから探さなくったっていいじゃない?」
俺が新聞を捲って探していると、コーヒーを淹れたマグカップを2つ持ったエレナが隣に座った。
「当たった事無いから、探してみたいんだよ。それに椅子の力を自分の目で確かめたいんだ」
未だに半信半疑だった。
エレナは膝ぐらいの高さのテーブルに、俺の分の湯気が揺らめくマグカップを静かに置いた。
初対面の日に一線を越えた俺とエレナは椅子を探すパートナーとなった。
そしてエレナは二週間ほど前から、一人暮らしには大きすぎる俺の家で暮らしている。
今後の事も考え、一緒に居る方が都合がいいのだ。
だが、理由はそれだけじゃない。
新聞を捲る手を止め、低いテーブルに置かれたマグカップを手にする。
湯気の立つコーヒーをすすりながら、俺達が出会った日の事を思い出す。