「私は“美”と“能力”“性”の力を司る椅子を3つ持ってるの」

エレナは頭を上げてうつ伏せに体勢を変えると、斜め上から俺を見下ろして、エレナが所有している椅子について説明を始めた。

「まず“美”を司る椅子は文字通り所有者を美しくしてくれるの。あぁ心配しなくても私の場合はスッピンに軽くメイクをした程度にしか力を使ってないから」

メスを使わない整形か…などと考えていた俺に困った顔でエレナは小さく笑った。

俺は整形前の顔を知らなければ整形していても構わないと思っている。

整形に反対派ではない。

「次に所有者が望む能力を与えてくれる“能力の椅子”私の場合は相手の思考や記憶が読み取れるわ」

俺の口に出していない言葉を読めたり、家にある椅子について知っていたのも、エレナの所有する椅子の力なのか。

「最後に“性”の力を宿す椅子。えっと…言葉にするのが難しいんだけど、相手の性欲を高めてヤりたい時にヤれる状況を作ってくれる…って言ったら解るかしら。私がこの椅子を持ってなかったら竜治は誘いを断っていたわ」

「なるほど」

俺は自分の中で理解し、コクコクと頷く。

エレナに惹かれてから俺の行動が変だったのは、この椅子のせいか。

俺の“金の椅子”は金運が上がるといったところか。