「なぁエレナ、俺達って商店街で会う前にどっかで会った事あるか?」

ソファーに二人並んでDVDを見ている時に突然、竜治がテレビから視線だけを向けて聞いてきた。

「気のせいじゃない?私達は、あの日に出逢ったのよ?」

「そっか」

竜治は聞いてみただけという様な反応で、再びテレビに視線を戻した。

……嘘、なんだけどね。

正直、竜治に初めて会ったのはあの日じゃないと知られてしまったと焦ったが、本人は気にしていない様なので安心した。

本当は商店街の人ごみで会ったのは二度目。

初めて会ったのは、もっとずっと前でまだ私が清太の彼女だった頃。

上司を紹介すると言われ、食事に行ったのが彼、日影竜治だった。

心臓の鼓動が高鳴るのが分かった。

背が高くスラリとした体型でお洒落にスーツを着こなし、爽やかな笑顔がとても素敵だった。

一目惚れなんて初めての経験で、そんな自分に気が付いて恥ずかしかった。

最初は上手く話せなかったが、言葉を交わす内に緊張の糸も解れ、どんどん竜治の魅力に惹かれていった。