バスルームの扉が開き、俺は考えるのを止めた。

湿った石鹸の香りと共にバスローブ姿のエレナが現れた。

ボブだった髪はストレートに変わり、毛先から垂れる雫がバスローブの胸元に吸い込まれる。

「じゃぁ俺も」

立ち上がりエレナの横を通ってバスルームに向かうと、手首を掴まれた。

「いいの、そのままで。早くシましょう?」

エレナは俺の両手を掴むと、グッと距離を縮めて俺を上目遣いで見上げた。

シャワーを浴びたせいで赤くなった頬、濡れた髪、ぷっくりとした唇、熱いぐらいの手から伝わる体温。

俺を誘惑するには充分だった。

でも、今日の俺は何処かおかしい。

普段の俺らしくない行動ばかりだ。

エレナは俺の手を放すと、一歩後に下がりバスローブの紐に手を掛けた。

俺はゴクリと唾を飲み込み、エレナの手の動きを見つめた。

エレナは紐を解き、両腕を引き抜いてバスローブを脱ぎ捨てた。

パサリとエレナの足元に円を描く様にバスローブが落ちる。

俺は童貞の様に目の前の裸体に釘付けになった。