ティッシュが傷口を塞ぎ、大量の消毒液が奥へ奥へと染み込んでいく。

ひじの痛みなんか忘れて、悪魔にも見える濡れそぼつティッシュを投げ捨て、勢い良く息を吹き掛ける。

ヒリヒリ、ピリピリ、痛すぎる。

涙目になりながら一心不乱に息を吹き掛けていると、エレナが薬箱をあさっている音が聞こえてきた。

「絆創膏だと傷口にまで貼っちゃうから包帯ね」

エレナは手際良くカーゼを当て、優しく包帯を巻いてくれた。

相変わらず傷口は熱を持ってジンジン痛むが、空気に触れなくなり少し痛みは和らいだ気がする。

「怪我だけ見ると事故ったみたいだね」

苦笑いを浮かべながらエレナは薬箱の蓋を閉めた。

「転んだだけってゆーね」

ハハハと声に出して笑う。

「あの、さ……」

棚に薬箱を片付けているエレナの背中に声を掛ける。

「んー?」

エレナは薬箱を元あった場所に戻すと、棚の扉を閉めて片膝を立てて座っている俺の隣に腰を下ろした。