でも俺は立ち止まらず、クラクションが鳴り響く中、交差点を通過した。

「はぁ……はぁはぁ……っ……エ、レナ……エレナ……」

息が上がって上手く声が出ない。

それでも名前を叫び続ける。

気付けばエレナと出逢った商店街の通りを走っていた。

ここでエレナに声を掛けられ、ストーカーだと疑われ焦ったのを思い出す。

「はぁ……はぁ……はぁ……」

立ち止まり、膝の少し上辺りに手をついて息を整える。

額から汗が流れ、鼻の先や毛先からポタポタと垂れ、アスファルトにシミを作った。

顔を上げると、エレナと行ったレストランが目に入った。

レストランの営業時間は過ぎていたので、店に明かりは点いていなかった。

俺はその場に座り込み、思っていた以上に体力が失われていた事に気付く。

後ろに手を突くと、右肘が痛んだ。

肘を見てみると、白い長袖に赤黒いシミが広がっていた。

見てしまったがために肘に激痛が走った。

連動するかの様にズキズキと痛みを主張し始めた膝に目をやると、ジーンズが破れ血だらけの膝が空気に触れていた。