少し考え、寿は全てを理解したのか目を見開いた。

「あの時のウィナー……なのか?」

恐る恐る言葉を紡ぐ寿に、俺は黙って頷く。

「そんな……嘘だっ!!……フフフ、フハハハハ」

寿は片手で頭を抑えながら、狂った様に気味の悪い笑い声を上げた。

「アンタが?アンタが俺に勝ったウィナーだって言うのか!?そんな金無いだろっ!!脅したって無駄だぞっ!!」

寿は受け入れられない事実に落ち着きを無くし、顔面のコントロールを失っている。

「悪いが俺も椅子の所有者なんだ。金はいくらでも集まる」

俺は殺の椅子の力を使い、寿を苦しめて苦しめて殺す事を望んだ。

俺の瞳が漆黒に変わったのだと、寿の引き攣る顔を見て分かった。

刹那、ドクンと大きく跳ねた心臓の鼓動を右手に感じた。

これは寿の心臓だと直感した。

思わず目の前に右手をかざすが、勿論そこには心臓なんて無かった。

だが、まるで寿の心臓をこの手で鷲掴みしているかの様に、ドクドクと鼓動を感じる。

かざした右手の指の隙間から、胸を抑えて俺に恐怖の眼差しを向けている寿と目が合った。