自分が願えばこの世から一人の人間が消えてしまう。

今の俺にはその力がある。

その事実がどうしようもなく怖くて、今すぐにでも所有権を投げてしまいたかった。

でも恐ろしい椅子をエレナに押し付けるのは男として、どうかと思う。

“永遠の命”を手に入れたいエレナの為にも“助け”を求める和華菜の為にも俺はヘタレててはいけない。

「……どうせなら、俺の目の前で殺す」

願って勝手に死ぬのは簡単だが、命を奪う者として最期を見届けようと思う。

「じゃぁ……明日行こう?」

ずっとワイングラスに注がれた赤ワインを見つめていたエレナが俺を見た。

「……そうだな」

頷いた俺は再びグラスを傾ける。

悩んだって仕方ない。

俺は殺るしかないんだ。