殺の椅子と契約を交わしてから丸2日が経った夜。

本来なら今頃、あのそば屋の地下でオークションが開催されていた。

だが俺は所有権を放棄するつもりはない。

それに俺の次はエレナが所有者になる。

「ねぇ……いつ清太を殺るの?」

赤ワインを呑みながらキューブ型のチーズを摘んでいると、同じ様にワイングラスを傾けていたエレナが、ワイングラスを回しながら静かな口調で聞いてきた。

「うーん……。人を殺す事は勿論良くない事だから、安易な気持ちで椅子の力を使いたくない……ってのが俺の正直な今の気持ち、かな」

俺はグラスを回し、揺れる赤ワインを見つめながら答える。

「本当は不思議な力を宿した“七つの椅子”なんて存在しちゃいけないんだ。使い方にもよるけど、人生を左右するチートだからね」

十分に空気を含ませた赤ワインを舌で転がす。

エレナは何か考えているのか、グラスを傾け黙っているので、俺は鼻から抜けるワインの香りを楽しんでから言葉を続けた。

「……でも、この七つの椅子が無かったら俺達は一緒にワインなんて呑んでない。だから椅子の存在を完全否定はしたくない」

ベラベラとかっこつけた言葉を並べているが、俺は怖いのだ。