今ここで寿を殺したっていいが、俺から沢山の幸せを奪った奴を簡単には殺したくない。

どうせなら苦しめて苦しめて殺したい。

“突然死”なんかで死ぬのは許さない。

なら契約では誰を殺そうか?

名前と顔が一致しなければ殺すことは出来ない。

あ、ひらめいた。

これは“殺の椅子”であって“殺人”の椅子ではない。

ならば“何か”を殺せばいい。

それなら無駄に人が死ぬことはない。

俺は一つだけ名前と一致する“物”を思い浮かべた。

きっと俺の茶色の瞳は漆黒に染まっているだろう。

「契約が交わされました。これでこの呪われた椅子は貴方のものです」

俺は無事に契約を交わせた事に安堵の溜め息を漏らす。

ようやく、これで和華菜を助ける事が出来る。

そして最後の椅子となった“邪の椅子”が手に入る。