この地下のオークション会場に入ってから、どれだけの時間が経ったのだろう。

長身は文字盤を何周もしている。

「こんなに待つなら天ぷらそば食ってからにすれば良かったァ……」

腹の虫がずっと暴れまわっている。

「あたしもぉ……」

ぺったんこな腹を摩りながらエレナが同意してくる。

「はぁ~……」

俺の溜め息と同時に足元のライトが消え、椅子を照らす天井からの照明のみとなった。

「皆様……お待たせしました」

会場の中心からしわがれた低い声が響く。

その声を発したであろう人物は金の杖を突いて、椅子と同じ照明に当たっていた。

「あれ、さっきのご主人ね」

「だから聞いたことある声だったのか」

司会者になった老爺は、クチバシの様な鼻が付いた仮面で顔を隠し、黒いフードとマントで体を隠していた。

俺達の座る最上段からでは長い鼻しか見えない。