「うわ、うまそ~……イテッ」

エレナにテーブルの下で、すねを蹴られた。

別に俺が言わなくてもいいだろうに。

「あの、ご主人?……このイス、良いですね」

心臓がバクバクして笑顔が引き攣る。

「若いのに、この良さが判るのか。あ、トイレあっちね」

老爺はシワシワな笑顔を向けた。

チラリとエレナを見ると口元に小さな笑みを浮かべられた。

どうやら上手くいった様だ。

「ごゆっくり」

老爺は店の奥に再び姿を消した。

「……いよいよね」

「あぁ。ご対面だ」

かつおだしの香りに後ろ髪を引かれながら、俺達は若い男と同じ様に席を立ちトイレへと向かった。

細い廊下には男用トイレと女用トイレ、スタッフルームの3つの扉があった。

「ここか?」

明らかにスタッフルームが怪しい。