「好きな人に裏切られて、そこからかな。
  恐怖があってね。」


美羽先輩はさみしそうに笑った。
それを見て、私は言わずにはいられなかった。


 「私もありますよ。裏切られたこと。」

 「・・・」

 「だから、その怖い気持ち、よくわかります。」

 「私ね、和也だったから信じられた。
  和也だったから好きになれた。
  和也だったから、毎日が楽しかった。」


美羽先輩は泣いていた。


 「私も一緒です。
  私も和也先輩だったから好きになれた。
  和也先輩だったから信頼できた...。」

 「・・うん。」

 「きっと私たち、似ているんですね。」

 「・・・・・」

 「だから、先輩は幸せになってください。
  私のことは気にしなくていいんですよ。」


そう言ったあと、私は早足で立ち去った。

本当は譲りたくない恋だった。
あきらめたくない想いだった。


だけど伝えられなくて
心の中で繰り返す。


“キミのことが大好きです”

って。そう。