家にお邪魔すると、
そこには相変わらず、野球のバッドやサッカーボール等が玄関にかけられていた。



茶の間に促され、入ると
そこには気難し気に座っている人がこちらをみてふ、と笑みを浮かべてきた。


「香住さん、来てくれたんだね。
楽に座ってくれ。
家内が茶を出してくれるだろうから」


「ありがとうございます。
本当に、お久しぶりですね。」

そう言って腰を下ろす。

本当に、久しぶりだった。

あの日から
なんだか現実から逃げたくて、目を背けたくて、
此方には訪れる事ができなかったのだ。


「あれから、
君がどうしたものかと
一人で心細いだろうと
家内と話していたんだよ。」

そう言って、
心の底からほっとした様な表情を浮かべ、私を見ていた。


きっと、
私がショックのあまり
自殺でもしてしまいそうな顔を、
あのときしていたし

仲よくしていた分、
余計に心配してくれていたのだろう。


「でもこうして、
私達のもとへ来てくれて本当によかった」


そう言ってお茶をお盆から取り、私の前に置いてくれる。


私には、それがありがたく、
そして申し訳ない思いで一杯で、
重く重くのし掛かっていた。


二人の前では、
私は頭が上がらないのだ。
どんなに月日が流れようと。